素直な心はどこ? 夜叉/1985年/日本/127分/60
高倉健は素直にかっこいいし、ビートたけしも素晴しいし、いしだあゆみは綺麗だし、田中裕子も魅力的だし、小林稔侍もいい味出してる。
日本を代表する役者が豪華に揃って、みどころ満載なんだけど、サスペンス映画ばっかりみてて心がひねくれてるのか、どうにも素直に楽しみにくい。
高倉健演じる修治は、人を殺している。最初に出てくる思わせぶりなシーンでははっきりとは分らないけど、ラストで出てくる回想シーンでは、はっきりと殺しちゃってる。で、そういった業を背負った人間が「かたぎ」の世界に入ってくる。なに? ヤクザだから人を殺しても捕まらないのか? なんかその辺の描写がちょっと突き放されててすごく気になる。
おまけにそんなヤクザの所業を知ってか知らずかいしだあゆみ演じる冬子が惚れて一緒になるんだけど、修治はあっさり裏切って田中裕子演じる螢子抱くんだよね。
私と過ごした15年は一体なんなの? 冬子は涙ながらに訴えるのだけれども、俺も画面に向かって訴えていたのであった。
まあ、この男と女のことは理屈ではないし、たとえ極道の嫁だろうが、そりゃも~、好きになる時は好きになるので仕方ないのかもしれないけど。
ダメになったからといって、あっさり冬子の元に戻るのもどうなの? いいの、これ?
最後、螢子が修治の子供を身ごもった、という思わせぶりな展開に、螢子が悪魔の微笑みを見せて、田中裕子の底力を見せるんだけど、でも、それ本当に修治の子なの? あんた、修治とやったあと、矢島にもレイプされてたじゃん?
状況としては妻帯者でまだ覚悟もそこまでは無かっただろう修治と、先のこと何も考えず行き当たりばったりの矢島じゃ、避妊問題はどう考えても、そりゃ矢島の子じゃないのか、と突っ込みたくなる。
ああ、イカン。サスペンス映画とか、人間社会で裏切られ続けてるせいで、単純に素直に楽しむ能力が亡くなっている。
ストーリーはかくのごとくのめり込めなかった部分がかなり沢山あるんだけど、とにかく芸達者が揃っていて、見応えは間違いなくあった、とはいえよう。